総院長の柳沢です。
歯医者になってから32年、開業してから24年目を迎えます。
歯科医師という仕事をしていると患者様から学ぶことや感心させられることも多く、この仕事に就いてよかったと思います。今回はほんの一例ですが、歯医者になってよかったと思えた患者様のことをお伝えしたいと思います。
本日は毎週クリーニングに来られる方から、開口一番、声が変だと指摘されました。花粉症なのか、熱はないですが鼻水のため鼻声だったのです。この患者様は私のことをよく観察されます。恐縮ですし、緊張しますが、本来であれば私の声ではなく、患者様の状態を先にお話ししたかったので、先手を打たれてしまいました(笑)そしてさらに、「無理しすぎてない?」との温かいお言葉。いつもその方が来られるだけでありがたく、うるうるしそうなのですが、いつも優しく、時にクリニックに問題を感じられたときは注意してくださります。患者様からはいつも見られているという緊張感と自分の健康管理の重要性を改めて感じました。
また、スタッフから、「総院長の不在の時に、総院長の声が優しくて声を聞くだけで治った気持ちになる患者様がいらっしゃいました。」と報告され、耳を疑いつつ、嬉しい気持ちになりました。幼少の頃、病弱だった私は、いつも父の帰りを待っていて、父が目の前に現れるとどんなに辛い状態でも病が治った気持ちになったのを思い出しました。患者様は辛くて歯科医院を訪れます。そんな患者様の不安や心配、恐怖心を少しでも取り除けるよう、これからも仕事中もできるだけ優しい気持ちでいたいと、改めて感じました。
月一回のクリーニングを欠かさず25年以上続けられている患者様のお話しです。25年前からと言えば、独立前からメンテナンスさせていただいているのです。この患者様は、毎回私に世の中のことを色々と教えてくださります。受付では、会計時に色々教えてあげているのにお金を取るのかと冗談を言って受付を和ませていただけます。長きに渡り継続して通っていただける方がいらっしゃることで、仕事に対する緊張感がさらに増します。
かつてですが、約10年ぶりに来られた患者様のお話しです。大変怖がりの方でしたので、よく覚えていました。私が卒後1年目に拝見していた方でしたので、新米だった拙い私でしたので、追っかけて来ていただき驚きと感謝の念で一杯でした。20歳で結婚されていて、お元気そうに見えましたので、「お元気でしたか?」と聞きましたら、「全然ですよ。」とおっしゃいました。大きな病気をされていると聞きました。そして、まもなく他界されたと、後になって32年ぶりに来られた実のお姉さまから聞かされました。お姉さまは今でも遠方から治療に来られています。患者様にとっては1年目もベテランもない、精一杯、常に自分の最高のパフォーマンスを発揮する姿勢が大切であると再認識しました。
36年ぶりの再会は、大学時代のアルバイト家庭教師先の元高校生でした。大学から調べて来られたようです。高校で剣道をやっていたとのことだったので、大学の剣道部に連れて行ってあげたことがありました。良いことはしておくものですね。嬉しい再会となりました。
月一回訪れる患者様ですが、全体的に歯を綺麗にされました。インプラント4本含めかなりの金額になったため、旦那様はご存知なのかなと心配になりました。しかし、歯が綺麗になったせいでしょうか、検診のたびにいつもいつもニコニコです。年上の方ですが、私に向かって「ファンなんです。」と冗談でおっしゃったりしていただけます。恥ずかしながらも「ありがとうございます。」と答えるのが精一杯な自分です。それにしてもいつも素敵な笑顔なので、さぞかし幸せな人生なのだろうと思ったのですが、そうでもありませんでした。この方はご病気でとても辛い手術をされておりました。大変悲しかったと思うのですが、「全然悲しくなかった。」とおっしゃいました。入院中に看護師さんに“歯が綺麗ですね”と褒められたからだそうでした。“私には綺麗な歯がある” と、たくさんの看護師さんに歯を見せて自慢されたそうです。幸い今はお元気で来院されておりますが、歯科医師という仕事を通して微力ながら患者様の役に立てたかなと、嬉しさを噛み締めました。
研修医上がりの歯科医師に伝えるのは、「真実は一つ、真実以外は興味がない」です。私たちの仕事は簡単に誤魔化せるものでもなく、だからこそ、現状に至った原因を考え尽くし、過去の先輩や自分の失敗を記憶し、起こりうる将来を予見し、より辛くない最良の結果が高確率で出せる治療を提案しなければならない。特に歯科医師という仕事においては、記憶するという作業がとても重要であるということを肝に銘じています。結果が重要な仕事ですから、患者様の期待に応えられるよう、これからもスタッフとともにベストを尽くしていきたい。
長文をお読みいただき、ありがとうございました。コロナを堺に私たち医療人に対する感謝の言葉を下さる機会が増え、私たち医療人のモチベーションにつながっております。