歯ぐきが腫れる、歯ぐきから血が出る、歯がグラグラして不安定になるなど、歯周組織や歯に様々なダメージをおよぼすことがあるお口の病気、歯周病。
歯周病が中程度~重度に進行すると、歯を支えている顎の骨(歯槽骨)が溶け、歯が抜け落ちる・抜歯せざるを得なくなるケースも少なくありません。
歯を失う大きな原因であることに加え、歯周病は糖尿病などの全身性の病気・症状との深い関係も。
今回は、歯周病がひき起こす可能性がある・深く関係しているとされる4つの病気・症状について、ご説明します。
■歯周病がひき起こす可能性がある・深く関係しているとされる4つの病気・症状
①糖尿病
歯周病は糖尿病と深く関係しています。反対に、糖尿病も歯周病に関係が。
歯周病が進行すると、サイトカインなどの炎症性物質の作用によってインスリンの働きが低下しやすいです(血糖値をコントロールしにくくなる)。
インスリンの働きの低下にともなう血糖コントールの悪化により、歯周病が進行した方は糖尿病も進行しやすくなることが研究によって指摘されています(※)。
Stöhr, J.et al.「Bidirectional association between
periodontal disease and diabetes mellitus:
a systematic review and meta-analysis
of cohort studies」(2021)より引用。
反対に、糖尿病の方は血糖コントロールの異常が影響し、免疫機能の低下によって歯周病が進行しやすい傾向が見られます。
②心筋梗塞・脳梗塞
歯周病は心筋梗塞・脳梗塞をひき起こす可能性があることが指摘されています(※)。
歯周病が進行し、顎の骨の中を通る血管内に歯周病菌が侵入すると、歯周病菌が出す内毒素や炎症性物質が血管の内壁を傷つけ、血栓を作ることがあるとみられています。血栓が心臓にできた場合は心筋梗塞、血栓が脳にできた場合は脳梗塞が起きる可能性も。
(※1)東京大学大学院医学系研究科「日本人男性
労働者における歯周病と心筋梗塞の関連性に関
する5年間の追跡調査」(2014)より引用。
(※2)A Lafon,B Pereira,T Dufour,V Rigouby,M Giroud,Y Béj
ot,S Tubert-Jeannin「Periodontal disease and stroke: a me
ta-analysis of cohort studies」(2014)より引用。
③誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、飲食物や唾液が誤って肺の中に入り、ひき起こされる肺炎です。
一般的には、加齢により、飲み込む筋肉が低下した中高年の方に誤嚥性肺炎が起きやすいとされています。
誤嚥性肺炎は致死性が高い肺炎であり、日本人の死因の第6位です(※1)。
加齢のほか、唾液中に含まれる歯周病菌が炎症性物質を出し、のどの筋肉反応を低下させて誤嚥性肺炎をひき起こす可能性があることが指摘されています(※2)。
(※1)厚生労働省「令和5年人口動態統計月報年計
(概数)の概況」(2023)より引用。
(※2)岡山大学大学院医歯学総合研究科「歯周病原
性細菌によって起こる誤嚥性肺炎の分子免疫学
的病態の研究」(2002-2003)より引用。
④早産・低体重児出産
歯周病にかかっている妊婦の方は、早産・低体重児出産の確率が多いことが研究・調査によって報告されています(※)。
現時点での推論ではありますが、歯周病菌が出す炎症性物質が子宮の収縮を促進させ、早産・低体重児出産が起きるのではないかと見られています。
(※)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科「歯周病と産婦
人科疾患の関連性」(2012)より引用。
【毎日のセルフケア&歯科医院の定期検診が大切です】
歯を失う原因の第1位であり、全身性の病気・症状をひき起こす可能性もある怖い病気「歯周病」(※)。
(※)公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の
抜歯原因調査」(2018)より引用。
今回お伝えした全身性の病気・症状のほか、歯周病がどのように歯周組織を傷つけ、歯を失うことがあるのかについてはブログにてお話ししています。お時間があるときでかまいませんので、併せて、お読みいただければ幸いです。
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歯周病をはじめとして、むし歯など、お口の病気を防ぐためにはご自身で行う毎日の歯みがき+歯間清掃が必須です。ただし、セルフケアのみでは歯についた歯垢・歯石などの汚れは落とし切れません。
セルフケアに加え、歯科医院で定期検診(検診+歯のクリーニング)を受けることで、ご自身では落とし切れない歯垢・歯石を除去しやすくなります。歯科医師が行う検診(お口の健康状態のチェック)により、歯周病・むし歯などのお口の病気・お口の異常に対して早期に治療を始めやすくなるメリットも。
食べ物を噛むために欠かせない、大切な歯。歯の見た目はお顔の印象にも大きく関係してきます。
かけがえのない歯・歯周組織を守るために、毎日のセルフケアをしっかり行うと共に、歯科医院で定期検診を受けましょう。