「歯が痛い…むし歯はなさそうなのに、ヘンだなあ…」
「口の中に特におかしいところがないのに、歯の痛みが続いている…」
歯が痛むと、真っ先に思い浮かべるのは「むし歯」ですよね。たしかに、むし歯は象牙質や歯の神経へ進行すると、歯にしみや痛みを感じやすくなります。
歯の痛みは、むし歯が原因のことが多いです。しかし、歯の痛みはむし歯のみによってひき起こされるとは限りません。知覚過敏で歯が痛んだり、肩こり・ストレスなど、お口以外の原因で歯が痛むケースも。
今回は、歯が痛むときに考えられる代表的な原因をご説明します。現在、歯が痛む方は、ご自身の状態と照らし合わせて、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
目次
■歯・歯周組織が原因の歯の痛み
1-1. むし歯
お口の中にひそむミュータンス菌などの細菌によって歯が溶かされ、歯のエナメル質の下にある象牙質や歯の神経へ細菌がおよぶと、歯に痛みを感じることがあります。
≪むし歯の歯の痛みの特徴≫
・冷たい物や、熱い物(歯の神経の近くや歯の神経までむし歯がおよんでいる場合)がふれると、歯にしみや痛みを感じる
・食べ物を噛んだときに、歯が痛む
・10秒以上、歯の痛みが続く
・何もしていないときや就寝中に、ズキズキと歯が痛む(歯の神経がむし歯に侵されている場合)
1-2. 知覚過敏
歯ぎしり・食いしばりや、噛み合わせの力が強い、強すぎる力での歯みがきなどが原因で歯のエナメル質がひび割れたりすり減ることがあります。エナメル質のひび割れやすり減りにより、エナメル質の下にある象牙質が露出して空気にふれてしまい、知覚過敏がひき起こされるケースも。
知覚過敏になると、冷たい物や熱い物、風、歯ブラシなどがふれたときに歯にしみや痛みを感じやすくなります。
≪知覚過敏の歯の痛みの特徴≫
・冷たい物や熱い物、風、歯ブラシなどがふれたときに歯にしみや痛みを感じる
・歯のしみや痛みは、10秒未満で収まることがおおい(持続的ではなく、瞬間的な一過性の歯のしみや痛み)
1-3. 歯根膜炎
むし歯や歯周病、合っていない詰め物・被せ物のすき間からの細菌感染により、歯根を包む歯根膜が炎症を起こし、歯が痛むことがあります(歯根膜炎)。歯を削るなど、歯科治療の刺激が原因で歯根膜炎を発症する場合も。
≪歯根膜炎の歯の痛みの特徴≫
・歯が浮くような違和感があると共に、歯の痛みがある
・噛んだとき、歯に強い痛みを感じる
[歯周病は歯が痛くならないの?]
日本人の約8割がかかっているとされる“国民病”、歯周病。
歯周病は歯ではなく、歯の周りの組織(歯周組織)である歯ぐきや顎の骨がダメージを受ける病気です。
歯周病は歯・歯周組織に痛みを感じにくく、ご自身では気づかないうちに病気が進行する特徴があります。
重度の歯周病で歯ぐきが大きく下がり、顎の骨の大部分が溶けても、歯・歯周組織に痛みを感じないケースも。
■歯・歯周組織以外が原因の歯の痛み(非歯原性歯痛:ひしげんせいしつう)
2-1. 筋・筋膜痛(きん・きんまくつう)
咀嚼筋などの顎周りの筋肉がこると、コリによって生じた痛みの物質が血管に乗って散らばり、歯に痛みを感じることがあります。顎周りの筋肉のコリのほか、首・肩のコリが歯の痛みをひき起こすケースも。
≪筋・筋膜痛の歯の痛みの特徴≫
・上下の奥歯に痛みを感じる
・ズーンと鈍い感じで歯が痛む
・1日中、歯が痛む
・歯の痛みが出たり収まったりする
・顎周りや首・肩など、トリガーポイントになっている箇所を指で押すと、歯が痛む
2-2. 神経障害性歯痛
頭部や舌の神経など、末梢から中枢に通う神経のどこかに障害が起き、歯に痛みを感じることがあります。
≪神経障害性歯痛の歯の痛みの特徴≫
・ツーンとした鋭い痛みを歯に感じる
・ビリビリと電気が走るような痛みを歯に感じる
・歯の痛みは一瞬で収まることが多い
・じりじりとした、焼けつくような歯の痛みが1日中続く(持続性神経痛)
2-3. 気圧性歯痛
歯の内側には、歯の神経や血管が通う歯髄腔(しずいくう)という空間があり、ふだんは、歯の内側である歯髄腔と歯の外側の気圧が同じになるように保たれています。しかし、台風などの低気圧の影響で外の気圧が下がると、歯髄腔が影響を受けて歯の内側に圧力がかかり、歯に痛みを感じることがあります。飛行機に乗り、高い高度に機体が上がったときも同様に歯の内側に圧力がかかり、歯に痛みを感じる場合も。
≪気圧性歯痛の歯の痛みの特徴≫
・台風などで低気圧のときに歯に痛みを感じる
・飛行機に乗り、高い高度に機体が上がったときに歯に痛みを感じる
2-4. 心臓性歯痛
狭心症や心筋梗塞など、心臓の疾患が原因で歯が痛むことがあります。
≪心臓性歯痛の歯の痛みの特徴≫
・胸が痛むのと同時に、歯が痛む
・胸や顔が痛むのと同時に、歯が痛む
・歩いたり、運動で身体を動かしているときに歯が痛む
・興奮したときに歯が痛む
・食事中に歯が痛む
・安静にしていると、歯の痛みが軽減する
2-5. 精神疾患やストレスによる心因性の歯痛
うつ病、統合失調症などの精神疾患が原因で歯が痛むことがあります。精神疾患のほか、ストレスが原因で歯が痛むケースも。
≪精神疾患やストレスによる心因性の歯の痛みの特徴≫
・歯が浮くような違和感があると共に、歯の痛みがある
・噛んだとき、歯に痛みを感じる
【歯の痛みや違和感がある方は歯科医院で早めの受診を】
むし歯のほか、歯の痛みはさまざまな原因によってひき起こされる可能性があります。歯・歯周組織以外の原因で歯に痛みが生じるケースも。
歯の痛みの原因を突き止め、痛みの解消にアプローチするためには、まずは、歯科医院で診察を受けることが重要です。
歯の痛みの原因は必ずしも歯・歯周組織にあるとは限りませんが、歯科医院での受診により、歯の痛みが歯・歯周組織からひき起こされているのか、あるいは、歯・歯周組織以外の原因によって歯の痛みが生じているのかの問題分けをしやすくなります。
歯の痛みや違和感がある方は放置せず、できるだけ早めに歯科医院を受診しましょう。