当院では、保険診療の根管治療はもちろん、自費診療の根管治療も行っています。
抜髄や根管治療など、歯の神経の治療については、先月のブログでお話をさせていただきました。
自費の根管治療、と聞くと、患者様によっては「保険と自費で根管治療に違いがあるの?」
と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、保険と自費の根管治療には、用いる器具・機器などに明確な違いがあります。
今回は、「保険・自費の根管治療」にはどのような違いがあるのかのご説明です。
目次
■保険の根管治療の特徴
◎用いる器具・機器に制限があり、根管内部の再感染(根管治療の失敗)が起きてしまうことも
保険の根管治療では、主に以下のような器具・機器を用いて施術を行います。国のルール上、保険の根管治療は使用できる器具・機器に制限があるため、根管内部の再感染(根管治療の失敗)が起きてしまうケースもみられます。
[保険の根管治療で用いられる主な器具・機器]
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ラバーダムは用いない
保険の根管治療では、原則として、ラバーダム(細菌感染を防止するための膜状のゴムシート)は用いません(※)。ラバーダムを用いないため、保険の根管治療においては、治療中、治療中に細菌が混入する可能性があるため、注意が必要とされています。
(※)稀ですが、保険の根管治療でラバーダムを用いるクリニックもあります。
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レントゲン
保険の根管治療では、レントゲンを用いて患部を平面的(2D:縦・横)に撮影します。平面的な情報しか得られないため、レントゲンでは複雑な根管の形状・根管の位置を把握しにくいのです(根管の奥行きがわからない)。
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肉眼or拡大鏡(ルーペ、サージテルなど)
保険の根管治療では、歯科医師の肉眼による目視のみでの施術or拡大鏡(2~5倍程度の倍率)を用い、施術を行います。
肉眼や拡大鏡では、とても細く小さな根管内部を詳細に確認できません。根管内部を詳細に確認できないため、保険の根管治療は歯科医師の勘・経験に頼る部分が大きくなります。
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ステンレスファイル
根管内部のお掃除の際に用いるステンレス製の器具です。ステンレス製で丈夫ですが、柔軟性&弾力に欠けるため、複雑な形状の根管の奥深くにファイルを差し込みにくい場合があります。
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ガッタパーチャ
根管治療の仕上げの際、根管内部に充填するゴム状のお薬です。この素材自体には、殺菌作用がありません。そのため、もし根管内の消毒が不十分なまま充填してしまうと、わずかに残った細菌が原因で、治療後に再び感染が起こる可能性があります。
また、封鎖性がやや劣っている点も課題です。
◎保険の根管治療の成功率は30~50%程度
東京医科歯科大学の調査結果では、保険の根管治療の成功率は30~50%程度と報告されています(※)。
(※)東京医科歯科大学 須田英明教授
「わが国における歯内療法の現状と課題」(2011)
より引用。
{根管治療の“失敗”とは?}
根管治療の失敗とは、
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治療中、唾液など、細菌を含む飛沫が根管内部に入り込む
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根管内部の神経・細菌を取り残しがある
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お薬の充填の封鎖性・殺菌性が低く、再治療になる可能性がある
上記のような原因により、根管治療が終了した後に再度、根管内部で細菌感染が起きてしまった状態を指します。
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保険の根管治療の成功率が30~50%程度と低い理由は、ラバーダムを用いないことや器具・機器の性能が不十分であることが原因と見られています。
◎保険の根管治療は4~8回前後の通院が必要になることが多いです
国の保険診療のルール上、
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用いる器具・機器に制限がある
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1人の患者様にあまり長く治療時間をかけられない
上記のような理由により、保険の根管治療は4~8回前後の通院が必要になることが多いです。
※患者様によって通院回数は異なります。
保険の根管治療が失敗し、再度、根管内部に細菌感染が起きてしまった場合は、数ヶ月~1年以上をかけての再治療(感染根管治療)が必要になる場合も。
根管治療が失敗すると、器具・機器や治療時間に制限がある保険診療では再治療(感染根管治療)がなかなか成功せず、最終的に抜歯になるケースもあるのです。
◎保険の根管治療が絶対にダメ、ということではない
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ラバーダムの不使用による根管内部への細菌感染
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用いる器具・機器に制限がある
上記のような要因により、日本では、主に歯科業界、および、近年ではネット上のSNSなどからも、保険の根管治療の問題点が指摘されています。
問題点が指摘されている保険の根管治療ですが、保険の根管治療が絶対にダメ、ということはありません。
歯科医師の技術が高く、ラバーダム防湿を行っているような歯科医院であれば(保険の根管治療では稀ですが)、保険の根管治療でも成功率を高められる可能性があります。
■自費の根管治療の特徴
◎高性能な器具・機器を用い、精密性を高めながら根管治療を行います
自費の根管治療では、主に以下のような高性能な器具・機器を用いる点が特徴です。
高性能な器具・機器を用い、細菌感染対策を徹底した上で、根管内部の神経・細菌の取り残しがないよう、精密性を高めながら施術を行います。
[自費の根管治療で用いられる主な器具・機器]
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ラバーダム
根管治療を行う歯の部分のみに穴を開けて用いる、膜状のゴムシートです。患者様のお口をラバーダムで覆うことで、治療中に生じる唾液などの飛沫による根管内部への細菌感染を防ぎやすくなります。
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歯科用CT
患部を立体的(3D:縦・横・奥行き)に確認できる歯科用のCTです。複雑な根管の形状・根管の位置を把握するのに役立ちます。
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マイクロスコープ
最大で20倍程度まで視野を拡大可能なスコープです。マイクロスコープを用いることで根管内部の状態を詳細に確認でき、根管治療の精密性を高められます。
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ニッケルチタンファイル
根管内部のお掃除の際に用いる、柔軟性&弾力性を持つ器具です。ニッケルチタンファイルを用いることで、くねくねと曲がった、複雑な形状の根管の奥深くまでお掃除をしやすくなります。
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MTAセメント
根管治療の仕上げの際、根管内部に充填する最終的なお薬です。強い緊密性・抗菌作用を持つため、MTAセメントを用いることで
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すき間なく根管にお薬を詰めやすくなる
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根管内部の細菌感染を抑えやすくなる
効果を期待できます。
◎自費の根管治療の成功率は70~90%以上
アメリカの歯科業界の調査では、上記のような(自費の)器具・機器を用いて根管治療を行った場合、治療の成功率は70~90%以上であった、と報告されています(※)。
(※)H A Ray,M Trope「Periapical status of endo
dontically treated teeth in relation to the technical
quality of the root filling and the coronal
restoration」(1995)より引用。
◎自費の根管治療は1~3回前後で終えられることが多いです
高性能な器具・機器を用い、精密性を高めながら施術を行うため、自費の根管治療は1~3回前後で終えられることが多いです(※)。
(※)自費の根管治療を1~3回前後で終えられる
ことを保証するものではありません。
■保険・自費の根管治療の違いを表にまとめてみました
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保険の根管治療 |
自費の根管治療 |
治療内容 |
必要最低限の器具・機器のみ使用可能 |
保険では用いることができない、 高性能な器具・機器を使用 |
細菌感染対策 |
ラバーダムなし |
ラバーダムを使用 |
撮影機器 |
レントゲン |
歯科用CT |
根管内部を確認する方法 |
肉眼or拡大鏡(2~5倍程度) |
マイクロスコープ(最大20倍) |
根管内部をお掃除する器具 |
ステンレスファイル (根管内部の奥深くまで差し込み にくい場合がある) |
ニッケルチタンファイル (根管内部の奥深くまで 差し込みやすい) |
根管内部に充填する最終的なお薬 |
ガッタパーチャ (封鎖性が低い・殺菌作用なし) |
MTAセメント (根管内部を緊密に充填しやすい) |
成功率 |
30~50%程度 |
70~90%以上 |
通院回数 |
4~8回前後 |
1~3回前後 |
費用 |
1本数千円前後 |
1本5~20万円前後 |
【根管治療でお悩みの方は当院までご相談ください】
当院では、1本の歯につき55,000~121,000円(税込)にて、自費の根管治療を行っています(※)。
(※)通常の自費の根管治療(根管の抜髄)~自費の感染根管治療の料金です。
根管治療は最初(1回目)が重要です。当院では、以下のような器具・機器を用いて根管治療を行っています。
[当院の自費の根管治療で用いる主な器具・機器]
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ラバーダム
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歯科用CT
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マイクロスコープ
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ニッケルチタンファイル
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MTAセメント
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今回は、「保険・自費の根管治療の違い」について、ご説明させていただきました。
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根管治療後、歯や顎の骨の痛みが続いている
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根管治療が失敗し、新たにどのクリニックで治療を受けるかで悩んでいる
など、根管治療でお悩みの方は当院までご相談ください。
診療では、それぞれの患者様の口腔内の状態に応じて、精密性を高めた根管治療をご提供いたします。