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手術を1回で終えたい方へ:同時埋入という選択肢
奥歯を失い、上顎の骨量が少ないためサイナスリフトが必要と説明された——。そんなとき、外科処置を何度も受ける時間はとれないと感じる方は少なくありません。骨造成とインプラント埋入を同じ日に進める「同時埋入」という方法もあり、条件が整えば手術回数を抑えられる場合があります。判断の分かれ目になるのは、残っている骨の厚みと初期固定が得られるかどうか。この記事では、大和市の歯科医院の視点から、同時埋入の条件と段階的治療との違いを整理します。
この記事の要点まとめ
- 同時埋入は残存骨の厚みや初期固定の可否など、複数条件を踏まえて検討されます。
- 段階的治療と比べ、通院回数やダウンタイムを抑えられる可能性がありますが個人差があります。
- CT診査や全身状態、喫煙習慣の確認を経て、適した術式を歯科医師と相談することが大切です。
サイナスリフトとインプラントを1回の手術で同時埋入できる条件

サイナスリフトは、上顎の奥歯部分にある空洞(上顎洞)の底の粘膜を持ち上げ、できたスペースへ骨補填材を入れて骨の高さを補う処置です。上顎の奥歯は骨が薄くなりやすく、そのままではインプラント体を支える土台が足りないと判断される場合があり、骨造成が検討されます1。
この骨造成と人工歯根の埋入を同じ日にまとめるのが「同時埋入」、骨が成熟するのを待って別日に埋入するのが「段階法」。どちらを選ぶかはご希望だけで決まるものではなく、解剖学的な条件と全身状態の両面から検討していきます。
基準となる残存骨の厚みと初期固定の必要性
同時埋入の可否を大きく左右するのが、上顎洞底から歯ぐき側までに残っている骨の厚み(残存骨高径)です。臨床ではおおよそ4〜5mm以上の残存骨があるかどうかが、ひとつの目安として語られてきました。理由はシンプルで、人工歯根を埋め込んだ時点で骨がしっかりくわえ込む「初期固定」が欠かせないと考えられているからです。
初期固定とは、インプラント体が骨の中で微動しにくい状態のこと。骨補填材はあくまで新しい骨ができるための足場であり、入れた直後は硬い骨ではありません。だからこそ、最初の支えを担うのは残っているご自身の骨になります。骨がわずかしか残っていない状態で無理に同時埋入を進めると、固定が得られにくくなる点には注意が必要です。
もっとも、厚みの数値だけで決まる話でもありません。骨の硬さ(骨質)、埋入する部位の幅、噛み合わせの力の方向まで含めて検討します。骨が薄めでも幅と骨質に恵まれていれば同時に進められることもあり、逆に数値上は足りていても条件が整わないと判断されるケースもあります。
歯科用CTによる上顎洞と骨形態の精密診査
平面のレントゲンでは、骨の厚みや上顎洞の形を立体的に把握しきれません。そこで用いるのが歯科用CTです。当院では歯科用CTやマイクロスコープ、口腔内スキャナー(iTero・Runyes)などの設備を整え、外科処置のための専用オペ診療室(オークヒルズ)も備えたうえで、治療前の精密検査を大切にしています。
CT画像では、主に次のような点を読み取ります。
- 残存骨の高さと幅:部位ごとにミリ単位で計測し、左右差や前後差を把握する
- 上顎洞の形態:内部の隔壁(骨の仕切り)の有無や位置。隔壁があると粘膜を持ち上げる操作に配慮が必要
- 上顎洞粘膜の状態:粘膜が厚くなっていないか、副鼻腔に炎症所見がないか
- 血管の走行:切開・剥離のルート設計に関わる
上顎洞粘膜に炎症が見られるときは、耳鼻咽喉科と連携して状態を整えてから手術時期を考えることもあります。画像診断の精度が、同時埋入という選択肢を慎重に見極められるかどうかを左右します。
全身状態や喫煙習慣が適応判断に与える影響
骨の条件が整っていても、身体の状態によっては段階法が望ましいと判断される場合があります。日本口腔インプラント学会も、インプラント治療では全身状態の評価が前提になるという立場を示しています1。
血糖コントロールが不十分な糖尿病では、傷の治りや感染への抵抗力に影響が出るとされています。骨代謝に関わる薬剤の服用歴、抗血栓薬の使用状況、血圧の管理状況なども事前の確認事項です。かかりつけの内科と情報を共有しながら進めるケースも珍しくありません。
喫煙習慣も見過ごせない要素です。ニコチンによる血流の低下は、骨補填材が新しい骨へ置き換わる過程や歯ぐきの治癒に不利に働くと考えられています。多くの歯科医院では、手術前後の一定期間の禁煙をお願いしています。加熱式タバコなら差し支えないと考える方もいらっしゃいますが、こちらも同様に控えていただくようご案内するのが一般的です。
大和市にお住まいで平日の休みが取りづらい方ほど、こうした条件を先に整えておくと、スケジュールの見通しが立てやすくなります。
同時埋入(1回法)と段階的治療(2回法)の違いと選び方
同じサイナスリフトでも、進め方によって通院の組み立ては大きく変わります。ここでは期間・身体への負担・費用構成という3つの視点から違いを見ていきましょう。
通院期間と外科処置回数の違い
段階法では、まず骨造成だけを行い、骨が成熟するのを待ってから改めてインプラント体を埋入します。当院の目安として、サイナスリフトによる骨造成期間は6〜9ヶ月程度を見込んでいます。そこに埋入手術と骨結合を待つ期間が加わるため、上部構造が入るまでトータルで1年を超えることもあります。
対する同時埋入は、骨造成と埋入を1日にまとめる方法。造成した骨が成熟する期間とインプラント体が骨と結合する期間が並行して進むため、全体の治療期間を短縮しやすい傾向があります。外科処置が1回にまとまるのは、有給休暇を取りづらい方にとって現実的な利点といえるでしょう。
なお、他の骨造成法では期間の目安も変わります。GBR(骨再生誘導法)やスプリットクレストは6ヶ月程度、ソケットリフトは4〜6ヶ月程度が当院での目安です。どの術式を選ぶかで、スケジュールの前提そのものが変わります。
術後の腫れ・ダウンタイムと身体的負担の度合い
「1回にまとめると腫れが強く出るのでは」というご質問はよくいただきます。サイナスリフトは歯ぐきを切開して上顎洞側壁から操作するため、術後3日ほどをピークに腫れや内出血が出ることがあります。頬の腫れ、鼻からのわずかな出血、鈍い痛みなどが数日から1週間程度続く場合があり、鎮痛薬や抗菌薬で対応していきます。
ポイントは、同時埋入ならこの回復期間を経験するのが基本的に1回になること。段階法では骨造成時と埋入時の2回、腫れと回復の時期を過ごすことになります。1回あたりの手術時間はやや長くなりますが、トータルのダウンタイムという観点では、同時埋入のほうが身体的な負担を抑えられる場合があります。
術後は激しい運動、長時間の入浴、飲酒を数日控えていただきます。鼻を強くかむ動作や、口を閉じたままのくしゃみも避けてください。仕事復帰の目安は職種によって差がありますが、デスクワークなら翌日以降から可能なケースが多く、人前に出るご予定があるなら1週間ほど余裕をみておくと落ち着いて過ごしやすくなります。
自費診療における費用構成と麻酔選択
サイナスリフトを伴うインプラント治療は自費診療です。費用は「骨造成」「インプラント体埋入」「上部構造」といった項目で構成され、これに検査費や麻酔費が加わります。段階法では外科処置が2回になるため、手術関連の費用や麻酔費が回数分発生します。同時埋入ではその部分をまとめられるため、総額を抑えやすい傾向がありますが、実際の金額は術式や本数によって変わります。
麻酔については、局所麻酔に加えて静脈内鎮静法(点滴麻酔)を併用する方法もあります。うとうとした状態で処置を受けられるため、外科処置への緊張が強い方に選ばれることがあります。当院の総院長は臨床歯科麻酔管理指導医として、全身状態に配慮した麻酔管理にあたっています。
一般的には、サイナスリフトの骨造成とインプラント体の埋入を別の日に分けることが多いのですが、当院では多くのケースで、1回でサイナスリフトとインプラント埋入を同時に進める方針をとっています。もちろん、CT診断と全身状態の評価を踏まえて段階法が望ましいと判断すれば、そのようにご提案します。費用と回数だけでなく、ご自身の骨の状態に合った進め方を歯科医師と共有するところが出発点です1。
サイナスリフトの同時埋入を検討する際の注意点とよくある誤解
手術回数の少なさだけに目を向けると、判断の材料が偏ってしまうことがあります。検討の段階で押さえておきたい点を整理しておきましょう。
「早く終わるから良い」とは限らない初期脱落リスク
同時埋入は、初期固定が得られることが前提になります。残存骨が極端に薄い場合、インプラント体は骨補填材という柔らかい環境に置かれるため、微細な動きが生じやすくなります。動きが続くと骨との結合(オッセオインテグレーション)が進みにくく、インプラント体が安定しないこともあります。
そうしたケースでは、先に骨造成だけを行って土台を育て、成熟を待ってから埋入する段階法のほうが理にかなっていると考えられます。「1回で終わらせること」自体を目的にすると、かえって治療全体が長引く可能性もあるわけです。
診査の結果、段階法をご提案されたときは、それは慎重な判断の表れと受け止めていただければと思います。同時埋入と段階法は優劣ではなく、条件に応じた使い分けです。
上顎洞炎など術後トラブルを防ぐための衛生管理
サイナスリフトで配慮すべき合併症のひとつが、術後の上顎洞炎です。上顎洞粘膜に小さな穿孔が生じたり、細菌が入り込んだりすることで、鼻づまりや頬の圧迫感といった症状が出ることがあります。
備えの第一歩は術前の準備です。花粉症や慢性副鼻腔炎の既往がある方は事前にお知らせいただき、必要に応じて耳鼻咽喉科での評価を挟みます。口腔内の清掃状態を整え、歯周病があれば先に対応しておくことも大切です。当院には滅菌専門スタッフが在籍し、器具の滅菌から院内の空気清浄まで含めた衛生管理にあたっています。
術後は処方された抗菌薬を指示どおり服用し、鼻を強くかまないなどの注意事項を守っていただきます。そして忘れてはならないのが、上部構造が入ったあとのメンテナンスです。インプラント周囲炎は自覚症状が乏しいまま進むことがあるため、定期的なプロフェッショナルケアと日々のセルフケアの継続が、長く使い続けていくための土台になります1。
ソケットリフトやショートインプラントという別の選択肢
すべてのケースでサイナスリフトが必要になるわけではありません。骨の減り具合によっては、より負担の少ない方法を選べることもあります。
- ソケットリフト:残存骨がある程度(目安として5mm前後以上)ある場合に、インプラントを埋入する穴から上顎洞底を少しだけ押し上げる方法。切開範囲が小さく、当院での骨造成期間の目安は4〜6ヶ月程度
- ショートインプラント:通常より短いインプラント体を用いることで、骨造成を避けられる場合がある。噛み合わせの力や本数の設計に配慮が必要
- 入れ歯・ブリッジ:外科処置を希望されない場合の選択肢。それぞれに適応と留意点がある
当院では治療の際にモニターを使い、CT画像をご覧いただきながら歯科医師が丁寧に説明しています。大和市で骨量に不安を感じている方も、まずはご自身の骨の状態を可視化するところから始めてみてください。選択肢を並べて理解したうえで決めていくことが、納得につながります。
よくある質問
Q1. サイナスリフト手術とはどんな手術ですか?
A. 上顎の奥歯の上にある空洞(上顎洞)の底の粘膜を持ち上げ、できたスペースに骨補填材を入れて骨の高さを補う処置です。歯ぐきを切開し、上顎洞の側壁から操作するのが一般的な方法になります。局所麻酔下で行い、ご希望や全身状態に応じて静脈内鎮静法を併用することもあります。
Q2. サイナスリフトの手術後、痛みはどのくらい続きますか?
A. 個人差はありますが、術後2〜3日をピークに腫れや鈍い痛みが出て、1週間ほどで落ち着いてくることが多いとされています。処方された鎮痛薬と抗菌薬は指示どおりにお使いください。経過が想定と異なるときは、自己判断せず早めにご連絡ください。
Q3. サイナスリフトの術後はどのように過ごせばよいですか?
A. 数日間は激しい運動、長時間の入浴、飲酒を控えていただきます。鼻を強くかむ動作や口を閉じたままのくしゃみは上顎洞に圧がかかるため避けてください。手術部位を避けた歯みがきの仕方や、指示された洗口の方法についても個別にご案内します。
Q4. 歯科で難易度が高い治療にはどんなものがありますか?
A. 難しさを一律に順位づけることはできませんが、骨造成を伴うインプラント治療や外科的な処置は、解剖学的知識と画像診断、そして術後管理まで含めた総合的な計画が求められる領域とされています。だからこそ、事前の精密検査と説明を丁寧に行うことを重視しています。
Q5. 骨が少ないと言われましたが、同時埋入は可能でしょうか?
A. 歯科用CTで残存骨の高さ・幅・骨質、上顎洞の形態を確認したうえでの判断になります。目安として4〜5mm以上の残存骨があるかどうかがひとつの基準とされていますが、全身状態や喫煙習慣も含めて総合的に検討します。まずは検査で現状を把握するところからご相談ください。
参考文献
1. 日本口腔インプラント学会「口腔インプラントに関する学術・臨床情報」 https://www.shika-implant.org/
2. Makar AB, McMartin KE, Palese M, et al. Formate assay in body fluids: application in methanol poisoning. Biochemical Medicine. 1975. PMID: 1 / DOI: 10.1016/0006-2944(75)90147-7
平成12年 つきみ野サティ(イオンつきみ野店)にやなぎさわ歯科 開設
平成15年 大和オークシティーイトーヨーカドー2Fにオークヒルズ歯科 開設
平成23年 ニューヨーク大学短期留学
平成30年 やなぎさわ歯科をつきみ野駅前に移転開業(やなぎさわ歯科つきみ野駅前クリニック)
令和元年 やなぎさわ歯科イオン板橋SCクリニック 開設
令和3年 鶴間中学校学校歯科医 就任
令和7年 東京医療秘書歯科衛生&IT専門学校歯科衛生士科 非常勤講師就任
神奈川県歯科医師会
日本歯科医師会
日本口腔インプラント学会
ICOI国際口腔インプラント学会 指導医・認定医
IDIA国際口腔インプラント協会 指導医・専門医・認定医
臨床研修歯科医 指導医
臨床歯科麻酔管理指導医
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